GM
みんな~~~~~~~~~~!!!!!!!
GM
青窓の時間だよ~~~~~~~~~~~!!!!
レーラ
わ~~~~~~!
ラタス
わ~~~~!!
ウエノ
わ~~~!!!
クロウ
わ〜〜〜〜〜!!
GM
GM
*お茶会 ラウンド2 ラタス4
GM
1d6 (1D6) > 2
GM
21日目。
GM
一行は南下を続けてきた。
GM
地図を見ながら、狂飆の頂へ。
GM
20日目あたりから、吹き付ける風の勢いが増してきた。
GM
地図では、そこから4日もせずに到着できる距離。
GM
狂飆の頂を中心に円が描かれ、その暴風域が記されている、が……。
ラタス
地図を見比べながら、
ラタス
「まずいな。地図に描いてあるよりも、ずっと手前にも暴風域が広がっている」
ウエノ
「えー!!」
ラタス
堕落の国の荒廃に伴い、地図の作られたころよりも暴風域が拡大している。
レーラ
「ふむ」
ラタス
いまでも吹き飛ばされるような風の強さで、ここから先は困難な道のりになるのは明らか。
ウエノ
暴れるマフラーに顔をめちゃくちゃにされている。
レーラ
なびく髪を押さえるのを諦めて、道なりを眺める。
ラタス
「引き返すなら今だぜ」
ウエノ
「はあ~!?」
クロウ
「え〜、今更〜?」ばさばさ〜
ラタス
「そりゃ~そうだろ」
ラタス
「ここから先にいくってことがどういうことなのか、わかってるか?」
クロウ
「お前も、俺らがここまでついてきたってことが、どういうことなのかわかってるかぁ?」
ラタス
「えっ、ラタスわかんない~」きゅるん
ウエノ
「こいつ……」
クロウ
「んもー、おバカさんっ」ぴょーん
レーラ
「ははは」
ウエノ
「でも実際、対策を立てないと大変ですよ」
ラタス
「ははは」
ウエノ
「このままがむしゃらに突き進んで、全員亡者オチなんて笑えないです」
レーラ
「まあ、それは一理ある」
ウエノ
っぺ! ぺっ!!(口に砂が入る)
ラタス
「まー、あれだな」
ラタス
「おれを殺せるかって話だな」
ウエノ
「……」
ウエノ
レーラを見る。
ラタス
21日。片道で4日以上かかるとすれば、30日までに戻ってくることは難しい。
ラタス
他の救世主がいることを全く望めるはずもない死地に行く。
クロウ
肩をすくめる
ラタス
となれば、責務はこのなかの一人で果たさなければならない。
レーラ
「今更だろう」
レーラ
「我々はそういうヤツの集まりだ」
ラタス
「だな~」
ウエノ
「いまさら、ですよ」
レーラ
体勢が崩れてしまわないよう、俯いて、足元を確かめながら歩く。
ウエノ
もらった紙は吹き飛ばされないようにリュックにしまってある。
ラタス
「まあ、おれはどっちにしろ『30日』を超えられないからな」
ラタス
「わかってりゃいいさ」
ウエノ
「ラタスが空を飛んで向こうにいけるか、あたしたちがラタスを引きずり下ろすか、勝負ってわけですね」
ラタス
「おろすなおろすな」
ウエノ
「え~~?」
クロウ
「ひひひ」
ラタス
「パンツ脱いででも落とすぞ」
ウエノ
「あたしが買ってあげたパンツを……」
ウエノ
救世主大好きな白兎が作った……あの!?
ウエノ
やすかったんですよね~~
レーラ
あのヤバイデザインの……
ウエノ
三枚組で……
ラタス
一行はそのまま荒野を進み……。
ラタス
辺りには木が一つもない、滑らかな岩肌の山岳。
ラタス
凄まじい風に岩が削り取られ、丸みを帯びている。
ラタス
落石に割れて鋭利になった岩もたくさんあり、その先端に裂けた風が笛のように音を鳴らしている。
ラタス
うろつく亡者はこの風を乗りこなす身軽な亡者か、あるいは極めて重たい身体をした、風に吹き飛ばされない亡者だけ。
GM
狂飆の頂シーン表1D6
1. 岩石の亡者だ! 風にびくともせず動き回っている。まともに戦うのは得策ではない。幸い、こちらには気付いていないようだ。このままやり過ごそう。
2. すさまじい砂嵐だ! ホワイトアウトし、立っているはずなのに前後左右どころか、上下すらもわからない。隣にいるはずの仲間にさえ声も届かない。
3. 難所に突風が吹き付ける! 仲間が崖から転落する。一人で這い上がるのは難しそうだ。
4. 崩落だ! 進もうとしていた先が崩れ落ち、砕けて風と散るのを見る。
5. 洞穴だ。強風が落ち着くまでやり過ごそう。
6. 風が凪いだ。束の間の休息をとるか、あるいは今のうちに先を急ぐか。
ラタス
1d6 (1D6) > 2
ラタス
2. すさまじい砂嵐だ! ホワイトアウトし、立っているはずなのに前後左右どころか、上下すらもわからない。隣にいるはずの仲間にさえ声も届かない。
ラタス
暴風域に突入してすぐの洗礼。
ラタス
救世主でも落ちたらただではすまないような崖のうえで、視界が消し飛ぶほどの砂嵐。
ラタス
待っていればやり過ごせるのか、あるいはそれでも進むしかないのか。
ラタス
本当に進んでいるのかも曖昧なまま、砂嵐をやり過ごす。
ラタス
そして視界が晴れると……。
ラタス
「流石にやばかったな~」
ラタス
「こんなのが続くのか……?」
ラタス
と後ろを振り返れば……。
ラタス
クロウとウエノがいない。
ラタス
「おいレーラ、あいつらどうした?」
レーラ
「……え?」
ラタス
「それともおれたちが迷子なのか!?」
レーラ
顔を庇っていた腕を下ろして、同様に確認する。
ラタス
ラタスとレーラは視界がない状況でも動くことを知りすぎている。
レーラ
「……。敢えて言うなら両方」
ラタス
ホワイトアウトした中でも、おおよその方向感覚がつく。
ラタス
「暴風域に入って一瞬でこれか~」
ラタス
「まったくすぐ迷子になる」ぷりぷり
レーラ
「ううむ」
レーラ
「急で気が回らなかった、すまない」
ラタス
「これはあれだな、なんかロープとかみんな持ってたほうがいいな」
レーラ
「次からはそうした方がいいね」
レーラ
「まあ、まずは今無事に合流できればだけれど……」
レーラ
待つべきか、探しに行くべきか。振り返って足を止め、逡巡。
ラタス
「もどるか」
レーラ
「……」
レーラ
「確かに」
レーラ
「ウエノは一歩も歩けないかもしれない」
ラタス
荷物をがさがさと漁るが、ちょうどいいロープがない。
ラタス
そのままレーラの包帯をつかむ。
レーラ
「ん」
ラタス
びよんびよんと引っ張る。
レーラ
「使うのは良いが遊ぶんじゃない」
ラタス
「ん~?」
レーラ
ラタスの腕に巻き付けて、はぐれないように引き付ける。
ラタス
「おっ」
ラタス
「便利だな~」
レーラ
「まあ、こういう時には役立つかもしれない」
レーラ
「どいつもこいつも、いつ、どこに行くか分からないからね」
レーラ
引き返すために歩む。
ラタス
「ひひひ」
ラタス
「そういえば全然関係ない話していいか?」
レーラ
「とりあえず聞こう」
ラタス
「お前とセックスしたときのことなんだけどよ~」
レーラ
「……」
レーラ
「…………」
レーラ
「うん」
ラタス
「あんときはああ言っていたが」
ラタス
「あのときもレーラだったろ」
レーラ
「それを聞いてどうしたい」
ラタス
「重要だろ?」
ラタス
「ちがうか?」
レーラ
「………………」
レーラ
「悪かったとは、思ってる」
レーラ
「あの時あそこにいたのが、ローラではなかったこと」
ラタス
「ひひひ」
ラタス
「本気でそう思ってるなら」
ラタス
「ちゃんとはっきり言うぜ」
ラタス
「ローラはもういないだろ」
ラタス
*レーラの心の疵『砕けた鏡』を抉ります。
ウエノ
*横槍を入れます
ウエノ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
ウエノ
2d6+1=>7 判定(+猟奇) (2D6+1>=7) > 8[6,2]+1 > 9 > 成功
ウエノ
1d6 (1D6) > 1
[ ウエノ ] HP : 23 → 22
ラタス
2d6+3=>7 判定(+猟奇) (2D6+3>=7) > 8[2,6]+3 > 11 > 成功
ラタス
「謝るようなことなんてないだろ」
ラタス
「悪いなんて言うもんじゃない」
ラタス
「そうだろ」
ラタス
引き止めるように、足を止める。
レーラ
絆しが張り詰める。
レーラ
「ローラ、は……」
レーラ
口ばかり微かに開いて、言葉が続かない。
レーラ
ローラはもういない。
レーラ
そんなことはずっと、はじめから分かっていた。
ラタス
「半年」
ラタス
「見ていればわかる」
レーラ
いつから、と、喉に籠った言葉が伝わる前に。
レーラ
「……はは」
レーラ
「それじゃあ、可笑しかったろう」
ラタス
「レーラ」
ラタス
「優しくしようとしたのはお前だろ」
レーラ
隣を見ることはできない。
ラタス
「おれを受け入れようとしたのはお前だろ」
ラタス
「……そして実際にそうしたのは」
ラタス
「お前だろ」
ラタス
風が吹いている。
レーラ
「ローラなら、そうすると思った」
レーラ
「ローラは、優しい子だったから」
レーラ
「だから……」
レーラ
だから、なにが違うというのだろう。
レーラ
半年。
レーラ
その月日を過ごしたのは、ローラではない。
ラタス
「……優しいのは」
ラタス
「レーラだろ……」
ラタス
「少なくともおれにとってはそうだ」
レーラ
繋いでいた帯が緩まる。
ラタス
その帯を掴む。
ラタス
振り向かせる。
ラタス
「レーラ」
レーラ
少女は、男の胸のあたりばかりを見て。
レーラ
それでも、手繰られるままに睫毛をもたげて。
レーラ
少女らしい、迷子のような、なきだしそうな顔をしている。
レーラ
「やさしくない」
レーラ
「やさしくないよ……」
ラタス
「……悪いな」
レーラ
意味がないことに耐えられない。
レーラ
虚像だけがただ、ここに居る意味。
レーラ
届かない絆しばかり伸ばして、ひとり絡まっている。
ラタス
「……」
ラタス
ナイフを手品のように取り出し、背中を一突きするかのように、
ラタス
不意に強く抱きしめて、
ラタス
唇を奪う。
ラタス
「おれは、お前にしたんだ」
レーラ
華奢な肩がふるえる。
ラタス
虚像に与える実像の一撃。
レーラ
声が、温もりが。いやにやさしくて。
レーラ
そういうところが嫌いだった。
レーラ
ずっと、前から。
ラタス
一つ、撤回していない嘘がある。
ラタス
『不要になったから切り捨てた』。
ラタス
しかしその言葉を裏返すことはできない。
ラタス
裏返せば、それは――。
ラタス
「話はそれだけだ」
ラタス
「いこうぜ、あいつらが待ってる」
レーラ
風が吹いている。
[ レーラ ] 砕けた鏡 : 1 → 0
ラタス
風が割れた岩を攫っていく。
ラタス
――それは21日目のこと。
GM
サブロール➅ - ウエノ&クロウ
GM
*お茶会 ラウンド2 ラタス4
ウエノ
「―――……っ!!」
ウエノ
叫びはすぐに風の中にかき消えた。
ウエノ
どこになにがあるのかもわからない。
ウエノ
一歩も動けない!
クロウ
そんなあなたの手を何かが掴む。
クロウ
肩も掴まれ、すぐ顔の横に何かが近寄る。
クロウ
「はぐれたな、こりゃ」
クロウ
あなたの耳元で声がする。
クロウ
ーーーどうも、ラタスとレーラの気配が周囲にない
クロウ
ーーーあいつらこういう状況でも動けるからってほいほい進みやがって
ウエノ
「わぎゃああ!!」
ウエノ
その叫びも風に消えていく。
ウエノ
口を開けたとたんに砂、砂、砂!
ウエノ
(死、死、死ぬ~~~)
クロウ
「ひひひ、元気そうでなにより」
クロウ
ウエノの顔の前を手で覆う。多少は砂を遮れるだろう。
クロウ
「で、だ。どうもあいつらとはぐれちまってるっぽいぜ?」
ウエノ
「ぶへっぶへへっ。なんでそんな……」
ウエノ
「ラタスがほいほい歩いていっちゃったんでしょうね」
ウエノ
想像がつく。
クロウ
「まあ〜、だろうな」けらけら
ウエノ
「ど、どうしよう。でも追いかけられません!」
ウエノ
歩くとか無理すぎる……
ウエノ
「あたしここで待ってるから、クロウは追いかけてあげてください……」
ウエノ
本気で言ってる。
クロウ
「え、なんでよ?」きょとん
クロウ
「置いていくわけねえだろ〜」
ウエノ
「だ、だってどんどんはぐれてっちゃいますよ!」
ウエノ
「はやく追いかけてあげなきゃ……」
クロウ
「いや、あとでウエノひとりを探す方がめんどい」
クロウ
「あとは単純に、この場所で一人になんのは危険だしな」
ウエノ
「い、いや、あたし丈夫だし、だし……」
ウエノ
まともに発声しないと声がかき消されていく。
ウエノ
「しょ、しょうがないですね~~」
ウエノ
「クロウは……さみしんぼですからね!!」
クロウ
「ひひひ。おう、そういうこった」
ウエノ
しがみつく。
クロウ
「だから、一緒にいてもらうぜ?」
クロウ
そう言ってあなたの体を抱える。
と同時にクロウの体が疵の力によって黒く変色していく。
クロウ
「ちと強引にでも、進んでいくかね〜」
ウエノ
「な、なぬーーっ!!」
ウエノ
ということは、この嵐の中で方向感覚がわからなくなるのはウエノだけってことで。
ウエノ
ということは、それを予想して、クロウはウエノを気にしていたってことでもあり。
ウエノ
「……く、悔しい……」
ウエノ
抱えられながら文句を言う。
クロウ
「あん?なんか言ったか?」
ウエノ
「なんでもっ!」
クロウ
「そうかい、じゃあしっかり掴まってろよ〜」
クロウ
疵の力による身体強化、それを使ってただ強引にこの砂嵐の中を進んでいく。
ウエノ
何度も見てきた、クロウの力。
ウエノ
その力が心の疵の、どこから作用しているものか、聞いたことはなかった。
ウエノ
いままでは。
ウエノ
「からすだから、クロウなんですか?」
クロウ
「ん?…おう、安直だろぉ?」
クロウ
「仲間も全員、そんな感じだったぜ。それぞれ、宿した魔獣…動物の名前をつけられてた」
ウエノ
「どこもそんなもんなんですねえ」
ウエノ
「あたしは『チルリル・ピューム』って呼ばれてましたよ」
ウエノ
そう名乗ったこともある。きみたちに敵として、立ちはだかったときに。
クロウ
「そういや、名乗ってたっけか。最初の時に」
ウエノ
「オピウム」
ウエノ
「あたしの魔法のもとになる、植物の名前です」
ウエノ
「あたしはオピウムのことは好きになれないけど、カラスのことは結構好きですよ」
クロウ
「ひひひ、それって告白かぁ?」
ウエノ
「あほーー!!」
クロウ
「ひっひっひ」
ウエノ
「ふ、ふつうになんか……いいなって思うだけです!」
ウエノ
「……あ」
ウエノ
「風、マシになってきましたかね」
クロウ
「ああ、言われてみりゃあそうだな…。これなら追いつけるかもしんねえな」
クロウ
「ああ、ちなみに」
クロウ
「俺はオピウムのことはよくわかんねえけど、ウエノのことは結構好きだぜ?」
ウエノ
「……」
ウエノ
「お、おろしてください」
ウエノ
「もう自分で歩けると思います……」
クロウ
「えー、ほんとかぁ?」
クロウ
まだおろそうとはしない。あなたを抱きしめたまま、進んでいく。
ウエノ
「歩けるっちゅーに!」
クロウ
「ひひひ、わかったわかった」
ようやくおろす。
ウエノ
しがみつくような姿勢には変わりはない。
ウエノ
クロウを頼りに歩いていく。
ウエノ
「そう、あたし、ウエノなんです」
ウエノ
「『チルリル・ピューム』じゃなくなってしまいました」
ウエノ
「ここは堕落の国。力が心の疵である以上、何が起きるかはわかりません」
ウエノ
「クロウも、『クロウ』ではなくなる時が来るかもしれない」
ウエノ
「あたしは……」
ウエノ
「クロウがクロウではなくても、けっこう好き、だと思います」
クロウ
「そりゃあ…」
クロウ
「ありがとな」
クロウ
すでに俺は、俺を見失っている。
クロウ
仮面だらけだった自分は一体どこへ行ったのやら。
ウエノ
「行きましょうか」
ウエノ
「二人が待ってます」
クロウ
「ああ、そうだな」
GM
GM
*お茶会 ラウンド2 レーラ
レーラ
1d6 (1D6) > 1
GM
22日目。
レーラ
1d6 (1D6) > 4
GM
4. 崩落だ! 進もうとしていた先が崩れ落ち、砕けて風と散るのを見る。
GM
ラタス、レーラ、ウエノ、クロウの順番で進む中。
GM
4人を2つに分かつようにして足場が崩れる。
ウエノ
「ぎゃーー!!」
ラタス
「大丈夫か!?」
クロウ
「………」
無言でウエノの手を引いて下がらせる。
ラタス
今立っている足場もまた安定してはいない。今にも崩れ落ちそうだ。
クロウ
「…あっぶね」
ラタス
「先で待ってる、回ってこい!」
ウエノ
「し、死ぬかと思いました……」
ウエノ
クロウに礼を言う。「あたしたちは大丈夫です! 追いかけていきます!」
クロウ
「おーう、了解だー」
ラタスとレーラに向かって手を振る。
ウエノ
しかし……
レーラ
「……」
ウエノ
また二人きりにして、大丈夫なのだろうか。 声に出して伝えはしなかった。
レーラ
「こちらも大丈夫だから、二人とも気を付けて」
ウエノ
「はい。行きましょう、クロウ」
クロウ
「おー」
レーラ
その背を見送る。
レーラ
「ラタス。私たちも行こう」
ラタス
「おう」
ラタス
二人の背を見届けて、吹きすさぶ風をゆく。
レーラ
何も言わず、男の胴に包帯を滑らせて繋ぐ。
ラタス
拒まない。
レーラ
歩く。
ラタス
歩く。
レーラ
「……ラタス」
レーラ
声音は、四人でいた先程より幾らか余所余所しい。
ラタス
「なんだ?」
レーラ
「ラタスは怖くないの」
ラタス
「怖くはないな」
ラタス
怖いことは、一つしかない。
レーラ
「そう」
レーラ
風が吹いて、今にも行く者を底へ落とそうとする。
ラタス
「たくさん殺した。たくさん死なせた」
ラタス
「次はおれの番ってだけだ」
ラタス
「遅すぎるくらいだ。そうだろ?」
レーラ
顔を持ち上げる。
レーラ
「……私は怖い」
レーラ
「……」
ラタス
……。
レーラ
「本当は。本当は、少しだけ、安心した」
レーラ
「ローラが、居なくなってしまったこと」
レーラ
「居なくなったのが、ローラだったこと」
ラタス
耳を傾けている。
ラタス
強い風にまぎれて言葉を取りこぼさぬように。
レーラ
「ローラがこんな思いをしなくて、良かった」
レーラ
風が吹いている。
レーラ
「そう。思ったことがある」
ラタス
「レーラは優しいな」
ラタス
元より話を聞けば、レーラという人格はローラから産まれたという。
ラタス
ローラの代わりに前に立つレーラはそもそも、優しいものだろう。
ラタス
あの夜があろうとも、なかろうとも、元より、初めから、ずっと。
ラタス
「世界は理不尽なものだな」
ラタス
……性交なんてものは、しようと思えばいくらでもできた。前の世界でも、今の世界でも。
ラタス
特別に高いものでもなければ、人を殺すほどに深く触れるわけでもない。
ラタス
ただひとえに、子供が生まれるのをおそれていた。
ラタス
この理不尽な世界のもとに、生まれないほうがいい。
レーラ
「……うん」
ラタス
そしてその理不尽を誰よりも担ってきた。
レーラ
少しだけ力がこもって、足取りが近くなる。
ラタス
「だから、おれは不安だな」
ラタス
「ローラの代わりにこんな思いをするお前に」
ラタス
「優しく出来るのはあいつらしかいない」
ラタス
「怖いのは一つだけ」
レーラ
高い後ろ姿を見上げる。
ラタス
「お前を置いていくことだ」
レーラ
「……」
レーラ
「うん」
レーラ
「私も同じだよ。でも、一つじゃない」
レーラ
「置いていかれることが怖い」
ラタス
「……」
レーラ
「でも、それ以上に」
レーラ
「ラタスを、ひとりで行かせてしまうことが、怖い」
ラタス
あのときは。
ラタス
あのときは言えた。
レーラ
絡まる。
ラタス
それはきっとレーラが止めるだろうとわかっていたから。
ラタス
今おれが崖へ跳べば、そうなるだろう。
ラタス
二人絡まったまま終わるだろう。
レーラ
少女の内を巡った赤黒い色が、白色を染めて。
レーラ
男を留めるように繋がっている。
ラタス
「お前は――」
ラタス
「優しいな」
ラタス
抱き寄せる。
ラタス
被さるように口づけをし、
ラタス
背中から傷口にふれる。
ラタス
言葉にしなかった分の猟奇を指先に。
レーラ
受け入れて、体躯に腕を回す。
レーラ
ぴくりと震えて、強く抱き締める。
ラタス
風の吹き付ける崖のふち。
ラタス
傷口が服越しに濡れる。
レーラ
*ラタスの『汚れた手』を舐めます。
レーラ
*猟奇で判定します。
ウエノ
*横槍を入れます
ウエノ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
ウエノ
2d6+0=>7 判定(+才覚) (2D6+0>=7) > 9[6,3]+0 > 9 > 成功
ウエノ
1d6 (1D6) > 2
[ ウエノ ] HP : 22 → 21
レーラ
2d6+0-2=>7 判定(+猟奇) (2D6+0-2>=7) > 7[4,3]+0-2 > 5 > 失敗
ウエノ
吹き荒れる風の中。
ウエノ
ピンク色の残滓が、砂とともにこぼれる。
ウエノ
目を瞠る。
ウエノ
崖のふちに立つ二人。
ラタス
あなたが見たのは口づけを交わしている瞬間だった。
ラタス
青い目だけを動かして、ウエノを見る。
ラタス
ゆっくりと瞬きをする。
ウエノ
手を伸ばす。
ウエノ
向かい風の中で走ると、やけにゆっくりとした動きになる。
ラタス
長い髪が流れて、その表情も、またレーラの視界も隠す。
ラタス
それから顔を上げる。
ウエノ
「死なないで」
ラタス
抱きとめていたレーラを手放す。
ウエノ
どう考えても、邪魔をするべきでなかった。
レーラ
それは風の音に紛れて。
ウエノ
そのまま、見ないふりをして、そっとしておいてやればよかった。
ウエノ
そのまま、崖の下へ転がりおちるのを、指をくわえて見ていれば良かった。
レーラ
瞬いて、それから、暫しラタスを見つめて。
ウエノ
だってあたしたちの行く先は、死と絶望しか待っていないのだから。
レーラ
緩やかに解ける。
ラタス
引き抜いた手は、赤黒く汚れている。
ラタス
レーラの血で。
ウエノ
「死なないでください」
ラタス
救世主の体は頑丈で、その肉体につけた傷は容易く治る。
ウエノ
「……レーラ」
ラタス
心につけた疵は、簡単には治らない。
ウエノ
息が切れる。
ラタス
覆さなかった嘘。
レーラ
濡れて、赤黒く染まっている。その背から、声がする。
ラタス
そばにいてくれ。お前が必要だ。
ラタス
「早かったな~ウエノ」
ラタス
「怪我はなかったか~?」
ウエノ
膝に手をやって、咳き込む。これでも全力疾走で。
クロウ
カラスはゆっくりと、ウエノの後ろから歩いてくる。
ウエノ
「っ、げほっ、けほっ」
レーラ
振り返らなくてはならない。
ウエノ
「あたし、まだ、レーラになんにも……」
ウエノ
「なんにもしてあげられてないの!」
ウエノ
「連れていかないで……!」
レーラ
でもどこか、なぜだか、不思議と、後ろ髪を引かれるような思いで。
ウエノ
けっきょく、ものを知らぬ子供みたいに、わがままに振る舞うことしかできない。
ウエノ
どんなに卑怯だとわかっていても。
ウエノ
それが、どんなに愚かだとわかっていても。
レーラ
なんにもしてあげられてない。
レーラ
何も。
レーラ
目の前の男を見上げる。
ラタス
「おれは大丈夫だ、レーラ」
ラタス
「あいつらと一緒にいってやってくれ」
ラタス
「あいつにはお前がまだまだ必要なようだぞ」
ウエノ
わんわんと泣きわめく。
レーラ
そんなの。
レーラ
あなただって同じだ。
レーラ
誰も彼もが、傷ついている。
レーラ
「……」
レーラ
それでも。
レーラ
私は“誰かのための私”で。
レーラ
誰かのことが、いつでも好きだった。
レーラ
「……ウエノ」
レーラ
振り返る。
ウエノ
「こんなふうに別れたくないよ……」
ウエノ
「あたし、レーラのこと、なんにも知ろうとしてこなかったんだ……」
ウエノ
「ラタスにも、そうだったみたいに」
ウエノ
「クロウにも、そうだったみたいに」
ウエノ
「レーラはあたしに、いっぱい、優しくしてくれたのに」
ウエノ
泣きじゃくる。
ウエノ
「あたしは、その場しのぎしかしてない」
ウエノ
顔を覆う。
ウエノ
「このままお別れなんて、いやだ」
レーラ
強風を感じさせない、静かな足取りで歩む。
レーラ
ウエノが泣いている、と思う。
ラタス
「いってやれよ、レーラ」
ラタス
「抱きしめてやれ」
ラタス
抱きしめられるのだって、おれよりもいいはずだ。
ラタス
この手は殺すための手。
ラタス
抉るようにしか触れることはできない。
レーラ
何が違うのだろう。何が。
ラタス
違うだろう。
ラタス
お前はおれを癒そうとした。
ラタス
お前は優しい。
ウエノ
泣いている。
ウエノ
同じように、迷子の子供が。
ラタス
――それは22日目のこと。
ラタス
サブロール➆ - ウエノ&ラタス
GM
*お茶会 ラウンド2 レーラ
クロウ
分断され別の道を進みながらぽつりと呟く。
クロウ
「急いだ方がいいだろうなぁ…」
ウエノ
「レーラがおかしいの、気付いてますか?」
クロウ
「そりゃなあ…」
クロウ
「どんくらいやべえかまでは…、わかんねえけど」
クロウ
「少なくとも放っておけねえだろうとは思うぜ?」
ウエノ
「あたしたちが無事に、ここから生きて帰れるかはわかりません」
ウエノ
「でも、どっちにしろ、ラタスはいなくなります……」
ウエノ
「あたしにはクロウがいますし、レーラにはラタスがいますけど」
ウエノ
「ラタスがいなくなったら、レーラは……」
クロウ
「………」
ウエノ
「ラタスのこと、お父さんみたいに思ってたんです」
ウエノ
「あたし」
クロウ
「…そうか」
ウエノ
「あたしのほんとのお父さんとは、全然似てないですけどね」
ウエノ
「……いまだって、受け入れられそうにないです。ラタスがいなくなるってこと」
ウエノ
「全部ウソだったらいいのにって思います」
クロウ
「………」
ウエノ
「でも、21日前のあの朝のあたしたちと、今のあたしたちは、違う」
ウエノ
「あの時みたいに、無邪気に取り乱したり、できないですよ。あたし」
ウエノ
「今のレーラを見てると……」
ウエノ
「クロウ、どうします?」
クロウ
「どう、ねぇ…」
ウエノ
「レーラが亡者になったら」
クロウ
「亡者になったらそりゃ殺すさ」
クロウ
「亡者を救うすべなんざねえ。もしかしたら存在すんのかもしんねえけど、今の俺らにゃどうしようもねえ」
ウエノ
「じゃあ」
ウエノ
「レーラを亡者にしないためには、どうしたらいいんでしょう」
ウエノ
「あたしは、レーラにたくさん救われてきました」
ウエノ
「でも、今のあたしたちに……レーラを救うことは、できますか?」
ウエノ
風が吹きすさぶ。
クロウ
風を受けながら、目を閉じて…しばらくの間沈黙が続く。
クロウ
「…まあ」
クロウ
「救うのは難しいだろうな。そもそも、あいつにとっての救いってもんが俺にはよくわかんねえ」
クロウ
「ラタスの代わりにだって、誰にもなれねえし」
クロウ
「…殺すことはできても、救うことはできねえ」
クロウ
また沈黙が訪れる。
クロウ
「だけど、そうだな…」
ウエノ
顔を上げる。
クロウ
「とりあえずウエノ。お前はレーラと一緒にいてやれ」
ウエノ
「なにができるんでしょうか、このあたしに」
ウエノ
レーラがウエノの何かに触れることはできても、ウエノがそれをできていると、ウエノ自身が思えない。
ウエノ
「あたしはまた、その場しのぎの夢しかあげられないのかもしれない」
ウエノ
「あたしはもう、『チルリル・ピューム』じゃない」
ウエノ
「だけど、振り返るといつでもそこに立っています。魔法少女のあたしが」
ウエノ
「あたしは、『チルリル』じゃないけど、『チルリル』からは逃げられないです」
クロウ
「…なにもできねえかもしんねえし、その場しのぎにしかなんねえかもな」
クロウ
「お前はもう、その『チルリル・ピューム』でもねえし」
クロウ
「人を救うなんてのは、そう簡単でもねえ」
クロウ
「でもよお」
クロウ
「俺らがこの半年近く一緒に旅してきたのは、その『チルリル・ピューム』でも魔法少女でもねえ」
クロウ
手を伸ばし、あなたの頭に手を置く。
クロウ
「ウエノ、お前だぜ?」
クロウ
「だからレーラと一緒にいてやれ」
ウエノ
「う」
クロウ
「それだけで、俺らがまた旅をする理由にはなるだろ」
ウエノ
「はい……」
ウエノ
撫ぜられる。
ウエノ
「……カンナ」
ウエノ
「カンナって呼んでくれませんか?」
ウエノ
「二人きりのときは」
ウエノ
「だから、クロウ」
ウエノ
「クロウの本当の名前も、いつか教えてくださいね」
クロウ
「………」
クロウ
「わかった、カンナ」
クロウ
「いつか…、いつか教えてやるよ」
クロウ
頭を撫で、その手であなたの頰に触れる。
ウエノ
見上げている。
ウエノ
「いつか、レーラにも」
ウエノ
「呼んでもらえるように、なりたいです」
ウエノ
カンナ。 その名前の由来を、父に聞いたことがある。
ウエノ
わからない、お母さんの決めた名前だから。
ウエノ
そういう答えだったから、作文にはそのままそう書いた。
ウエノ
嫌いな名前だ。
ウエノ
でもきみがそう呼んでくれるなら、いつか好きになれるかもしれない。
ウエノ
胸を張って、名乗れるようになるかもしれない。
ウエノ
そうしたら。
ウエノ
それは。
ウエノ
その場しのぎの救いでは、なくなるのかも、しれない。
クロウ
クロウ。研究者の連中が便宜上つけた名前だ。
クロウ
カラスの魔獣を宿したからという安直なもの。
クロウ
好きでもなければ嫌いでもない名前。翼を持っている癖に自由に飛べない名前。
クロウ
名前なんて、意味のないものだと思っていた。ただ呼ぶのに困らないだけの記号だと。
クロウ
けれど、あなたが呼んでくれるのならば…それは意味を持つようになるのかもしれない。
クロウ
いつか。
クロウ
そんな日が来るだろうと。
クロウ
「じゃあ、行こうぜカンナ」
クロウ
「あいつらと、一緒にいてやろうぜ」
ウエノ
「うん」
ラタス
*お茶会 ラウンド2 ラタス5
ラタス
1d6 (1D6) > 1
GM
不思議と道行は順調だった。
GM
風の巡りがよかったのか、それからトントン拍子に進む。
GM
23日目。
GM
一際強い風が壁のように逆巻いて、行く手を阻む。
GM
おそらくは待っても待っても消えることのない風の中に、4人は入っていく。
GM
完全な混沌の中、声も届かず、ただ結ばれた包帯だけが存在を確かにする。
GM
どれくらいその風の中を歩いたのか。
GM
視界が晴れる。
GM
狂飆の頂。
GM
台風の目。
GM
逆巻く雲は煙突のように天へと上り、そのさきに青空が窓のように顔をのぞかせている。
ラタス
「いやー、マジで間に合うとはな~」
ラタス
とにかく風ですごいことになってる格好のまま、空を見上げている。
ウエノ
「青空……」
ウエノ
「本当にあるなんて」
クロウ
「へぇ、こりゃあ…」空を見上げる
レーラ
見上げる。
レーラ
「あれが、空」
ウエノ
「この上にいけば、元の世界に帰れるんですか? 本当に?」
ラタス
「らしいぜ」
ウエノ
こうして辿り着いてしまうと。
ウエノ
ただの噂にして置くことも、できないような気がした。
ラタス
しばらく、口数少なに上を見上げている。
レーラ
「思っていたよりも、ずっと高いものだね」
ラタス
「だなあ」
ラタス
「いやー、お前たちのおかげだな」
ラタス
「一人だったらここまでたどり着かなかったかもな~」
クロウ
「ひひひ、かもな〜」
ウエノ
「あたしは、何も」
ウエノ
「何もしてないですよ」
ラタス
「そうか~?」
ラタス
「えーんえーんって泣くクロウを慰めたりしてたろ~?」
ウエノ
「わがまま言ってぎゃーぎゃー言ってただけですから……」
ウエノ
「ええ??」
クロウ
「えーんえーん」泣きポーズ
ウエノ
「えええ???」
レーラ
「今も泣いてるな」
クロウ
「あの時は、ありがとな…」イケメンっぽいボイス
ラタス
「流石だぜ~」
ウエノ
「バカ……」
レーラ
「はは」
ラタス
「あとお前のお陰でイチゴちゃんを食べれたな」
ウエノ
「……それはそうかも」
ウエノ
「でも」
ウエノ
手を伸ばす。空に向かって。
ウエノ
「あたしに、あの時みたいな羽があったら」
ウエノ
「ラタスがわざわざ、鳥にならなくても」
ウエノ
「連れていってあげられたかも、しれませんよ」
ラタス
「ははは、そうかもな~」
クロウ
「ひひひ、俺も飛べたらな〜」
クロウ
疵の力を使ってカラスを飛ばす。
それはしばらくの間青い空に向かって飛ぶが、途中で霧散していく。
ウエノ
青の中に散っていく黒を眺める。
レーラ
「アレじゃあ、人を運ぶには足らないだろうなあ」
ラタス
それに空はあまりに高い。並大抵の力でどうにかなる高さじゃないだろう。
ウエノ
「なんであたしたちって、こうして旅をしているんでしたっけ?」
ラタス
「なんでだろうなあ」
クロウ
「ひひひ」
ラタス
「半年間」
ラタス
「それとも、この23日間」
ラタス
「どうだ? 意味はあったか?」
クロウ
「あったんだと思うぜ?だから俺はここにいる」
クロウ
「少なくとも俺は、意味はあったんだと思いてえ…と思うようになった」
ラタス
「そうだな」
ラタス
「おれは……」
ラタス
「イチゴちゃんも食べれたし、海も見れたし、セックスもしたし……」
ウエノ
ウエノ
ききたくねえ
ラタス
「空も見ることができた」
ウエノ
「待って!」
ラタス
「あ?」
ウエノ
「まだやりたいことはないんですか?」
ラタス
「あー?」
ウエノ
「あるでしょう、何かほかに……」
ウエノ
「ま、まだ、何かあるんじゃないですか!?」
ウエノ
「………もう無理なんですか? 本当に」
ウエノ
「あと一日でも、二日でも」
ウエノ
「レーラと一緒にいてあげられないんですか」
ラタス
「……」
レーラ
ゆっくりと、瞬く。
ウエノ
「本当にやりたいことはもう無いんですか」
クロウ
小さく息を吐き、頭をかく。
ラタス
「ないな」
ウエノ
「あたしは、本当に、辿り着こうと思ってここまで来たわけじゃないんです」
ウエノ
「邪魔する気満々でしたし、実際邪魔しましたし」
ウエノ
「……あたしのこの23日間の意味は、ここまで旅をしてきたのは」
ウエノ
「ラタス。すべてをあなたの思い通りには、させないって、そういう目的でした」
ウエノ
「ねえ!」
ラタス
「ははは」
ウエノ
「本当になんにも、やりたいことはないんですか!」
ラタス
「ない」
ラタス
「今日で終いだ」
ウエノ
「まだ7日はあります」
ラタス
「いや」
ラタス
「今日で終わりにしたほうがいい」
ラタス
「おれに出来るのはそれだけだ」
ウエノ
唇を噛む。
クロウ
「まあ、そうだな」
ラタス
「7日間」
ラタス
「おれはレーラを殺すかもしれないぜ」
レーラ
瞬く。
ウエノ
「そうでしょうね」
レーラ
誰かの言葉を聞きながら。
レーラ
なんだか、逆さだと思っていた。
レーラ
はじめは根拠もなく、こどもごころに『そこにある』と思っていた意味。
レーラ
それが、みんな壊れてしまって。
レーラ
むしろ、少し、分からなくなった。
ウエノ
「……何度だって邪魔しますよ!?」
ウエノ
「あたしが押し入って泣きわめきますよ、都度」
ラタス
「……」
ラタス
「終わりにしてくれ」
ウエノ
「あたしは一人じゃないです」
ウエノ
「あたしにはみんながいる、あたしはもう一人じゃない」
ウエノ
「ラタスがいなくたって、やっていけると思う。もう」
ラタス
「それがおれからの最後の頼みだ」
ウエノ
「でも、」
ウエノ
「レーラは、」
ウエノ
ラタスがいないと一人になるんですよ。
ラタス
「おれにしてやれることはない」
ラタス
「……それを確かめたくはない」
ラタス
「クロウ」
ラタス
「頼めるか」
クロウ
「ああ」
クロウ
「そのために俺は、ここにいるんだろうよ」
ラタス
「お前たちはおれを殺してまた30日の猶予を得る」
ラタス
「おれは亡者となってあの窓の向こう側に行く」
ラタス
「その30日は奪ったものじゃなく、おれがよこしたものになる」
ラタス
「それ以上のことは、ないだろ」
ラタス
「クロウ」
クロウ
「ああ、そうだな」
クロウ
「それ以上の、意味のある30日はねえだろうよ」
クロウ
ゆっくりと、ラタスの方へと歩み寄る。
ウエノ
「……レーラはそれでいいんですか」
ウエノ
「さんざん邪魔したあたしが言うのもなんですけどっ」
ウエノ
「レーラ! これでいいんですか!?」
レーラ
「……」
ウエノ
ステッキを握りしめる。ぽろぽろ絆創膏がこぼれる。
クロウ
「レーラ、ウエノ」
振り向くことなく、二人の名を呼び…一拍置く。
クロウ
「何か言うなら、言っておけ」
ウエノ
「あたしはその場しのぎしか持ってないですけど」
レーラ
曖昧な宙を見つめていたのが、幾らか焦点を取り戻す。
ウエノ
「……きっかけなら、その場しのぎでも充分だと思いませんか」
ウエノ
レーラへ向かって歩き。
ウエノ
その手には、絆創膏を持っている。
ウエノ
それを、君の頬に貼る。
ウエノ
「本当にただ、見ているだけでいいんですか」
ウエノ
「すごい嫌ですけど」
ウエノ
「応援しかねますけど」
ウエノ
「趣味悪いなって思いますけど……」
ウエノ
「ラタスのこと好きなんじゃないんですか……」
レーラ
絆創膏の貼りついた頬に、徐に触れる。
レーラ
「…………でも」
レーラ
「わからない」
レーラ
「どういう顔をすればいいのか、とか」
レーラ
「何を言えばいいのか」
レーラ
感情のこもらない音が落ちる。
ウエノ
「レーラは、優しいです」
ウエノ
「でもあたしは、レーラは優しくなくたって、いいと思います」
ウエノ
「優しくないレーラで、優しくない言葉で、怒ったり、困らせたりしても」
ウエノ
「言うべきじゃない言葉をぶちまけたって」
ウエノ
「大丈夫です」
レーラ
ぎゅう、と、裾を握る。
レーラ
「でも…………」
レーラ
口を噤んで、俯く。
レーラ
年頃のこどもがそうするよう。
ウエノ
裾以外は握っていない手に、自分の手をそっと重ねる。
ウエノ
「大丈夫です!」
ウエノ
「大丈夫じゃなかったら、あたしが全力で邪魔します」
ウエノ
「だから、大丈夫になります」
ウエノ
「あたしたちは、仲間です」
ウエノ
「だから、レーラが少しくらい、優しくなくて、大変なことになったって……」
ウエノ
「あたしかクロウがなんとかしますよ、絶対に」
ウエノ
「信じてくれませんか?」
レーラ
「…………っ、」
レーラ
困らされることには、慣れていて。そのために私が居て。
レーラ
だから、何か。
レーラ
何か我儘を言ったことは、ほとんどなかった。
レーラ
ウエノの手を触れ返す。
レーラ
頬を滑って、耐えきれなかったひとしずくが落ちる。
レーラ
「……ラタス」
レーラ
「ラタス、…………」
ウエノ
手は離れて、きみの背中に。
ウエノ
とん、と軽く、ラタスのほうへ押し出した。
ラタス
ただ立っている。
レーラ
足元が覚束なくて、少しだけよろめいて、
ラタス
肯定も否定もなく、ただあなたをみている。
レーラ
それでも、一歩、二歩。ラタスの前に立つ。
レーラ
「……私、は」
レーラ
「私は、ラタスのこと」
レーラ
「要らないなんて、思ったことない」
ラタス
「ああ」
レーラ
「今までも、これからも」
レーラ
……。
レーラ
今も。
レーラ
「ずっと、そうだ」
ラタス
おれもだ。
ラタス
お前にそう思う。
ラタス
しかし言葉にはしない。
レーラ
だから。
レーラ
だから……。
レーラ
「でも」
レーラ
「二人がいるから、大丈夫だと思う」
レーラ
言葉以上のものが、瞳から零れる。
ラタス
「ああ」
ラタス
言葉にしてはいけないもの。言葉にしないもの。
ラタス
「……悪いな、一緒にいてやれなくて」
レーラ
「……………」
レーラ
顔を強く擦る。
レーラ
「空」
レーラ
「私は、初めて見たよ」
レーラ
「だから……」
レーラ
「飛んでみて、どうだったか」
レーラ
「いつか、教えてほしい」
ラタス
「ああ」
ラタス
「楽しみにしていてくれ」
レーラ
「うん」
レーラ
短い応答。それで終い。
レーラ
それから、少しだけウエノを窺って。
レーラ
少しだけ、情けなく微笑って見せた。
ラタス
クロウを一瞥する。
ラタス
何も言わない。
ウエノ
離れた手が、またレーラの手をとる。
ウエノ
何も言わない。
クロウ
ふっ、と笑みを返す。
クロウ
「ラタス」
クロウ
「俺からの言葉は特にねえ」
右手を掲げて、ラタスの目の前に立つ。
クロウ
その腕は黒い紋様に包まれていき、力を帯びる。
クロウ
「じゃあな」
クロウ
黒の腕が、あなたの心臓を。
クロウ
貫いた。
クロウ
その一瞬、ほんの一瞬。クロウは、目を瞑る。
ラタス
貫かれる。
クロウ
それでも、腕に伝わる感覚は確かなもので。
ウエノ
目を瞑る。
GM
鮮血の代わりに、傷口からは黒い煙が吹き上がる。
ウエノ
レーラに繋いだ手に力が籠もる。
GM
その煙を纏うようにして、姿が変容する。
レーラ
見ている。
レーラ
強張りが、ウエノに伝わる。
クロウ
ラタスの体から抜き取った手を、だらりと下ろしながら…一歩、また一歩と後ろに下がる。
ラタス
指の内側から肉を突き破って生えるのは、彼が得物にしてきた短剣。
ラタス
五指は刃物の爪となり、もはや触れる全てを引き裂くことしかありえない。
ラタス
手は赤く濡れ、黒い体に対して浮かぶように照っている。
ラタス
首にかけ、服の内側にしまっていた十字架が揺れる。
ラタス
その背に翼はなく、這う者に相応しい長い尾がのたうつ。
ラタス
『ドブネズミみたいな暮らし』と自嘲していた言葉の通りに、ネズミのような亡者。
ブラッドスクーパー
ガスマスクの目は、そこに無き青空の色に染まっている。
ブラッドスクーパー
ゆらりと頭を持ち上げ、声にならない咆哮。
ブラッドスクーパー
そして変貌を遂げるや否や、真っ先に飛び出す先は。
ブラッドスクーパー
レーラ。
ウエノ
目を開く。
ブラッドスクーパー
*レーラの心の疵『砕けた鏡』を抉ります。
クロウ
*横槍をします
[ クロウ ] HP : 23 → 22
クロウ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
クロウ
2d6+0=>7 判定(+才覚) (2D6+0>=7) > 4[1,3]+0 > 4 > 失敗
ブラッドスクーパー
2d6+3=>7 判定(+猟奇) (2D6+3>=7) > 10[6,4]+3 > 13 > 成功
ブラッドスクーパー
言葉にしなかったこと。
ブラッドスクーパー
お前が必要だ。
レーラ
その一部始終を、見ていて。
ブラッドスクーパー
亡者となり枷が失われば、それはその通りに動く。
レーラ
だから、咄嗟にウエノを突き飛ばす。
ウエノ
「っ!」
ブラッドスクーパー
赤い両手でレーラを掻き抱く。
レーラ
考えた結果じゃない。思いがけずそうした。
ウエノ
眼の前で。
クロウ
目を、瞑ってしまった。亡者になるラタスを見まいと、ほんの一瞬。
ウエノ
レーラが、亡者に。
ウエノ
ばか。
ウエノ
ラタスは、ばかだ。
ウエノ
本当にばか……
クロウ
ああ、ばかだぜラタス…。
レーラ
驚愕と、動揺とが入り混じって、くぐもった悲鳴になる。
クロウ
翼がなきゃよお、飛べねえじゃねえか…。
ブラッドスクーパー
亡者は心が疵に喰われたものの成れの果て。
レーラ
痛みの中で、眼前の亡者を認める。
ブラッドスクーパー
元より堕落の国ではじめてみた鳥の姿を、とるはずはない。
ブラッドスクーパー
レーラの背中に10の傷をつける。
レーラ
白かった背が赤く引き裂かれる。
ウエノ
「レーラから離れなさい!!」
ウエノ
ステッキをめちゃくちゃに振る。きらきらした光が散らばるが、それだけ。
レーラ
「ラ、タス」
クロウ
「離れろ、てめえはもう…」
クロウ
「亡者なんだからよ…!」
レーラ
零す。
クロウ
カラスが、黒い刃が…亡者を襲う。
レーラ
理不尽な世界だ。
[ レーラ ] 砕けた鏡 : 0 → -1
ブラッドスクーパー
攻撃に退き、レーラを取りこぼす。
レーラ
なされるままに地に落ちて、伏したところから赤黒い水溜まりが広がる。
ウエノ
落ちたレーラを助け起こす。いつかと同じ。
ウエノ
でも、いつかとは違う。
ウエノ
「……立てますか?」
ウエノ
「あたしたち、戦わないといけない」
レーラ
「…………」
レーラ
呆然として、けれど痛みが意識を明瞭にする。
レーラ
「……大丈夫」
レーラ
「大丈夫…………」
ウエノ
唇を噛む。
ウエノ
そして、振りかぶって、
ウエノ
頬を思い切り張る。
レーラ
「っ」
ウエノ
「本当にラタスを殺せるのは」
ウエノ
「レーラしかいません!」
ウエノ
「……しっかりしてください!」
ウエノ
酷なことを言っている。
ウエノ
でも、そうでしかない。それ以外は、その場しのぎにもならない。
ウエノ
手を引いて、無理やり立ち上がらせる。
レーラ
存外。頬を張られても涙は出ないものなのだと思った。
ウエノ
「大丈夫です」
ウエノ
「あたしたちがいます」
ウエノ
ラタスを殺せるのはレーラしかいない。だから、ラタスは亡者になった。
ウエノ
でも、レーラを一人にはさせない。
レーラ
「……」
レーラ
「うん」
レーラ
手のひらを握り返す。
レーラ
「……ありがとう」
レーラ
そうして、ウエノの言葉を受け取る傍らで。
レーラ
何か。
レーラ
酷く致命的な違和感。
レーラ
肉体が無事でも、責務を果たしていても。
レーラ
心が死ねば亡者になる。
GM
*レーラ、発狂。
GM
*ブラッドスクーパー、発狂。
ブラッドスクーパー
亡者になってすぐは意識がある、なんてのは噂話でしかない。真偽はわからない。
ブラッドスクーパー
青空の映るマスクの向こうの感情に心は見えない。
ブラッドスクーパー
ただそれは、あなたを求めている。
GM
――裁判開廷。
GM