GM
Dead or AliCe
GM
『It Happens All The Time.』
――それはよくあること。
GM
第三回。
GM
お茶会、第2ラウンドに入ります。
GM
GM
*お茶会 ラウンド2 ミュール
GM
二人が出会ってから23日目。
GM
日々は緩やかに過ぎていきます。亡者が攻め込んでくるようなこともなければ、あなたがたに頼まれるようなこともありません。
GM
先日の亡者の一件から、末裔たちの尊敬をより強く集め、村を出歩けば感謝の念を告げられることもあるでしょう。
GM
あの事件での死者は16名。負傷者はおおよそその倍。
GM
しかしあなたがたがいなければ、この村はもう存在してなかったでしょう。
GM
そうなったとしても、それはよくあることですが。
GM
午後。
ドードーの末裔
それはウィル・ホーソンが席を外したときでした。
ドードーの末裔
あなたがたの世話をするドードーの末裔がお茶をいれながら、ミュールに話しかけます。
ドードーの末裔
「そういえば、救世主様は……この村からはお出になられないのですか?」
ミュール
「この村から」
ミュール
出て、何処に行けばいい。
ミュール
「他に行くべきところとか」
ミュール
「やるべきこととか」
ミュール
「……何も知らなくて」
ドードーの末裔
「えっ……」
ドードーの末裔
言葉に詰まる。
ミュール
籠の鳥。
ドードーの末裔
「救世主様、は……ご存じない?」
ドードーの末裔
「救世主の責務、あるいは、30日ルールと呼ばれるものを……」
ミュール
「30日」
ミュール
彼と過ごすようになってから。
ウィル・ホーソン
ミュール。あなたは見たことがあるかもしれない。
ミュール
それくらい経つ。
ウィル・ホーソン
ウィル・ホーソンが、手帳に、なにか書き記していたのを。
ウィル・ホーソン
赤いバツの数。
ミュール
手帳のしるし。増えていくバツ。
ウィル・ホーソン
それがあなたと出会い、過ごした日にちの数だということを。
ミュール
その意味を、知らない。
ドードーの末裔
「救世主は……救世主を、探し求めなければいけない義務を、追っているのですよ」
ドードーの末裔
「それは、この世界から与えられた呪いともいえるかもしれません」
ミュール
「呪い……」
ミュール
探さなければいけない。
ミュール
荒野で、
ミュール
ウィルが、
ミュール
見つけてくれた理由。
GM
そして同時に、あの日彼が被っていた血の意味。
ドードーの末裔
「救世主は、救世主を殺さなければならないのです」
ミュール
「救世主は、救世主を殺さなければならない」
ドードーの末裔
「30日間の間に裁判で犠牲を出さなければ、救世主様は亡者になってしまうのです」
ミュール
繰り返す。
ミュール
咀嚼する。
ドードーの末裔
「え、そんな、まさか」
ドードーの末裔
「ご存じなかったのですか?」
ドードーの末裔
ドードーの手が止まっている。ポットにお湯を注いでから、そのまま時間が過ぎている。
ミュール
「そうですね」
ミュール
つまり、あと数日で。
ドードーの末裔
ダージリンティーの茶葉は、お湯を入れてからカップに次ぐまでの時間は3分。それ以上に抽出すれば、余計な苦味までもが出てしまう。
ドードーの末裔
「そんな……」
ミュール
30日が、来る。
ミュール
ウィルは、つまり。
ドードーの末裔
「でしたら、すぐに、この村から出てお探しになってください。もしかしたら、どこかで他の救世主にお会いできるかもしれません。地図……地図なら、ご用意いたしますから」
ミュール
亡者になっていないことはつまり。
ミュール
「それは、つまり」
ミュール
「私たち二人の場合」
ミュール
「それぞれ一人ずつ」
ミュール
「殺さねばならない?」
ドードーの末裔
「いえ、裁判で一人犠牲にすればよいですから、二人で一人で構いません」
ミュール
ひとり。
ミュール
この荒野で。
ミュール
その一人を探すのはきっと、
ドードーの末裔
もっと早くその事実を聞かされていれば、あるいは探す希望も見いだせたかもしれません。しかし時を覆すことは叶いません。
ミュール
見つかる保証のない水底から、砂金を掬い上げようとする行為にひとしい。
ミュール
時は戻らない。
ドードーの末裔
同時にそれは、あなたがウィル・ホーソンと行き会ったことがそれほどのことでもありました。
ミュール
魔女裁判の時間です。
ミュール
蒼い炎が囁いた。
ドードーの末裔
「そうだ、大きな街なら……ここから馬で15日ほど……」
ミュール
15日。
ドードーの末裔
「大きな街なら救世主様もいるものです」
ミュール
間に合わない。
ミュール
間に合わない。
ミュール
総てが。
ミュール
覆水盆に返らず。
ウィル・ホーソン
ミュール。貴女は手帳のバツの数を見ている。
ウィル・ホーソン
15日なんて、とてもじゃないけれど。
ウィル・ホーソン
……
ミュール
間に合わない。
ウィル・ホーソン
足音。
ミュール
間に合わないのよ、ウィル。
ウィル・ホーソン
ノックする。
ウィル・ホーソン
あの恥知らずの白兎とは違いますからね。
ドードーの末裔
ドードーの末裔ははっとする。
ドードーの末裔
「は、はい……」
ドードーの末裔
ぎこちない返事。
ウィル・ホーソン
「遅くなってしまいました。ちょっと、捕まってしまいまして」
ドードーの末裔
あなたを見るやいなや、
ドードーの末裔
「す、すみません」
ウィル・ホーソン
なにか袋を持っている。
ミュール
「ウィル」
ドードーの末裔
「私は、余計なことを申し上げたかも、しれません」
ドードーの末裔
ウィル・ホーソンから離れるように、部屋の隅に退きます。
ウィル・ホーソン
笑顔。
ミュール
「何でもない」
ミュール
「何でもないの」
ウィル・ホーソン
笑顔でドードーの末裔を見つめてから、ゆっくりとミュールのほうへ向く。
ミュール
ドードーの末裔に目配せする。
ウィル・ホーソン
「いつの間に、そこまで親しくなったんです?」
ウィル・ホーソン
「妬いてしまうな」
ウィル・ホーソン
袋をドードーに押し付ける。
ウィル・ホーソン
中には食料がいくつか。
ドードーの末裔
押し付けられます。受け取ったまま、中身も確認せずに棒立ちで。
ウィル・ホーソン
「夕飯はとびきりのものを頼むよ」
ウィル・ホーソン
「わかったね?」
ドードーの末裔
その口調に、かえってドードーの末裔は冷静さを取り戻します。
ドードーの末裔
「……わかりました」
ドードーの末裔
それから、静かにその家から出てゆきます。
ウィル・ホーソン
なぜ殺さなかった?
ウィル・ホーソン
……わからない。
ウィル・ホーソン
むしろここまで騙されてくれるなんて、思わなかったよ。
GM
GM
ウィル・ホーソンが持って帰ってきた食材で、たしかにその日の夕飯はいくらか良いものが並びました。
GM
赤い粥を食べ慣れた身には、豪華な食事と言えるかもしれません。
GM
しかし並ぶ食事とは裏腹に、その食卓には冷たく張り詰めたものがありました。
GM
夜。
GM
食卓は片付けられると、もうその日は末裔は世話には現れません。
GM
時計もない部屋で黙っていれば、ときおり荒野を吹き抜けてぶつかってくる風と、それに小屋が揺すぶられる音。それから互いの衣擦れ、足音、そして息遣い。
ウィル・ホーソン
ウィル・ホーソンは武器を布で磨き上げると、
ウィル・ホーソン
手帳を開いてペンでバツを入れます。
ウィル・ホーソン
赤いバツ。
ウィル・ホーソン
鎧や外套は身につけていない。
ミュール
バツが刻まれているのを見ている。
ミュール
「ウィル」
ウィル・ホーソン
そちらを向く。
ミュール
「荒野で会ってから」
ミュール
「何日経ちましたか?」
ミュール
…………。
ウィル・ホーソン
つめたいソプラノ。魔女のとろけるような声。
ウィル・ホーソン
「一緒に数えてみますか?」
ウィル・ホーソン
手帳を持って立ち上がる。
ウィル・ホーソン
ベッドに腰掛けるあなたの、隣に座る。
ウィル・ホーソン
男ひとりぶんの体重が乗り、軋み、熱がある。
ウィル・ホーソン
そのページを開いて、右手の指でなぞる。
ミュール
猶予を、探る。
ミュール
あと何日。
ミュール
それを、目で追う。
ウィル・ホーソン
15を数えたところで、次のページがめくられる。
ミュール
半月。
ウィル・ホーソン
密室で、この男が自分から、ここまで近くに来たのは初めてだ。
ウィル・ホーソン
「18、19」
ミュール
こんなに近くにいるのに。
ミュール
あなたは私を殺さない。
ミュール
こんなに長く一緒にいるのに、
ウィル・ホーソン
「21、22」
ミュール
あなたはただ──私の傍に居た。
ミュール
ただ、
ミュール
そばに。
ウィル・ホーソン
最後のしるしに指をもっていく。
ウィル・ホーソン
23。
ミュール
23。
ウィル・ホーソン
「荒野で出会ってから、何日経ちましたか?」
ミュール
「23日」
ウィル・ホーソン
いたずらっぽく微笑む。
ウィル・ホーソン
「上手に出来ました」
ウィル・ホーソン
ウィル・ホーソンの体は熱い。
ウィル・ホーソン
隣で、それがはっきり感じられる。
ミュール
傍に、体温がある。
ミュール
すぐ傍。
ミュール
隣。
ウィル・ホーソン
いつでも殺せる。
ウィル・ホーソン
お互いに。
ミュール
いつでも殺せる。
ミュール
お互いに。
ウィル・ホーソン
「なにか、内緒のお話があったみたいで」
ウィル・ホーソン
「どうしますか?」
ミュール
部屋の何処かで、蒼い光が揺れる。
ウィル・ホーソン
立て掛けられた旗槍がうごめく。
ミュール
魔女の呪い。
ミュール
魔女の証。
ウィル・ホーソン
魔女の呪い、魔女の証。
ミュール
「日数を、確認した意味が」
ミュール
「分かって、」
ウィル・ホーソン
あまりにやわらかそうで、触れたくなる。近くにいる。あまい香りがする。
ウィル・ホーソン
きらめいて見える。
ミュール
「それを訊いているの?」
ミュール
きらめいて見える。
ミュール
あの日、踊ったこころのまま。
ウィル・ホーソン
「だとしたら、どうしますか?」
ミュール
いくら埃にまみれても。
ミュール
失うことのない輝き。
ミュール
いくら血に濡れても、
ミュール
色を変えない愚かな感情。
ウィル・ホーソン
魔女よ。汚らわしい、死ぬべきさだめの、美しい、魔女。
ウィル・ホーソン
どうやら目の前の男は、貴女を裏切っているみたいですよ。
ウィル・ホーソン
「どうしますか?」
ミュール
「……ウィル」
ミュール
歌うような声。
ウィル・ホーソン
「貴女の声は、美しいですね」
ミュール
「人を、好きになるってことは」
ミュール
「ただ好意を向けるだけではなくて」
ウィル・ホーソン
その声を聞いている。
ミュール
「裏切られてもいいと、」
ウィル・ホーソン
脳がとろけそうな、あまい声。
ミュール
「何を捧げてもいいと、」
ミュール
「想うこと」
ミュール
微笑む。
ウィル・ホーソン
「それはそれは」
ウィル・ホーソン
「素敵ですね」
ミュール
「教会のこと、覚えている?」
ウィル・ホーソン
頷く。
ミュール
少女の像。
ミュール
手を取って、踊った。
ウィル・ホーソン
消したい記憶。
ミュール
「あの時言ったこと、覚えている?」
ミュール
覚えていたい。
ウィル・ホーソン
「ええ」
ミュール
「ウィル、私は今でも」
ミュール
「あなたが好きよ」
ウィル・ホーソン
「別に」
ウィル・ホーソン
「誰でも良かったと思いますよ」
ウィル・ホーソン
「貴女は」
ウィル・ホーソン
「そうやって、何人の男を騙してきたんだい」
GM
ウィル・ホーソン。あなたは何人の女を裁いて/陥れてきたのですか?
ミュール
「騙される方が、悪いと思わない?」
ミュール
「厭なら騙されなければいいと」
ウィル・ホーソン
「いいえ、いいえ」
ミュール
「思わない?」
ウィル・ホーソン
「騙されているのは貴女さ」
ウィル・ホーソン
笑う。
ミュール
「それを構わないと言ったのが」
ミュール
「あなたには分からない?」
ミュール
笑う。
ウィル・ホーソン
「いいえ」
ウィル・ホーソン
「貴女が騙しているのは貴女だと」
ウィル・ホーソン
「そう言っているのですよ……」
ウィル・ホーソン
「どうされますか?これから」
ウィル・ホーソン
「捧げてくれるんですか、僕に」
ミュール
「30日」
ミュール
「ねえ、ウィル」
ミュール
「30日経つわ」
ウィル・ホーソン
「貴女が歌えない鳥だなんて」
ミュール
歌うような声。
ウィル・ホーソン
「今では信じられないよ」
ウィル・ホーソン
「歌のような言葉ばかりつぶやいて」
ミュール
この声が、歌うように響くときは。
ミュール
いつも。
ウィル・ホーソン
「僕を陥れるんだね」
ミュール
誰かを陥れる時。
ウィル・ホーソン
「メロディもないくせに」
ミュール
「騙されてくれる?」
ミュール
「……騙されて、ウィル・ホーソン」
ウィル・ホーソン
「僕の恋人のように振る舞って」
ウィル・ホーソン
「僕のために用意された食事のように、皿の上に横たわって」
ウィル・ホーソン
「そして全てを僕に明け渡すことを、そう呼んでいるのかな?」
GM
密室で、この男が自分から、ここまで近くに来たのは初めてだ。
ミュール
「こいびとだなんて」
ミュール
「あなたの返事を聞いていないわ」
ミュール
*ウィル・ホーソンの心の疵『ミュール』を舐めます
ウィル・ホーソン
*横槍を入れます
ウィル・ホーソン
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
ウィル・ホーソン
ティーセット使用 +2に
[ ウィル・ホーソン ] ティーセット : 1 → 0
ウィル・ホーソン
2d6+0+2=>7 判定(+愛) (2D6+0+2>=7) > 7[6,1]+0+2 > 9 > 成功
ウィル・ホーソン
1d6 (1D6) > 6
ウィル・ホーソン
*ヤリイカ使用で8
[ ウィル・ホーソン ] ヤリイカ : 1 → 0
[ ウィル・ホーソン ] HP : 16 → 15
ミュール
*ティーセット使用します(ヤリイカ分相殺)
ミュール
2d6+3-6=>7 判定(+愛) (2D6+3-6>=7) > 10[5,5]+3-6 > 7 > 成功
[ ミュール ] ティーセット : 1 → 0
GM
ウィル・ホーソン。魔女の言葉に耳を貸すべきではありません。
何人もの男たちがその呪いに堕ちて、愚かな末路を辿ったことをあなたは知っています。
GM
ウィル・ホーソン。
GM
ウィル・ホーソン。
ウィル・ホーソン
「返事?」
ウィル・ホーソン
「……」
ウィル・ホーソン
「僕は、間違ったことは、しません」
ウィル・ホーソン
「救世主はすべて……打ち倒すべき、悪で」
ミュール
頷いた。
ウィル・ホーソン
「殺してきました。魔女を、」
ウィル・ホーソン
「気の狂った愚かな女たちを」
ウィル・ホーソン
「だから」
ウィル・ホーソン
「……だから?」
ウィル・ホーソン
体を焦がす熱。
ウィル・ホーソン
心を焦がす熱。
ウィル・ホーソン
「ですからね、」
ウィル・ホーソン
声が激情に震える。
ミュール
「殺しますか?」
GM
ウィル・ホーソン。あなたは神の名の下の槍。
心など必要なく、その御手であればよいのです。
GM
ウィル・ホーソン。潮時でしょう。
ウィル・ホーソン
「貴女を」
ウィル・ホーソン
「貴女に」
ミュール
「はい」
ウィル・ホーソン
「出会ってしまわなければ」
ミュール
魔女は、死ぬべきだ。
ウィル・ホーソン
「こんな、間違いを」
ウィル・ホーソン
「犯すことはなかったんだ」
GM
ウィル・ホーソン!
ミュール
ウィル・ホーソン。
ウィル・ホーソン
「僕は完璧だったのに!」
ウィル・ホーソン
「貴女と出会って、おかしくなってしまった!」
ミュール
完璧なものを、壊すのが楽しい。
ミュール
整ったものを、崩すのがたのしい。
ウィル・ホーソン
暴力的なしぐさで押し倒す。
ウィル・ホーソン
ぼろのベッドが軋む。
ウィル・ホーソン
亜麻色の髪が散らばる。
ミュール
笑った。
ウィル・ホーソン
あまい香り。
ミュール
「こんな狂った世界では」
ミュール
「おかしくなってしまった方が」
ミュール
「きっと楽しいわ」
ウィル・ホーソン
「じゃあ、何なんですか?」
ミュール
手を伸ばす。
ウィル・ホーソン
「こんな頭のおかしい僕を」
ミュール
髪を撫でる。
ウィル・ホーソン
「一人のこして行くというのですか、貴女は!」
ウィル・ホーソン
「あなたの声が……」
ウィル・ホーソン
「言葉が……」
ミュール
微笑む。
ウィル・ホーソン
「痛いなんてものじゃないんだ」
ウィル・ホーソン
「指先が……僕に触れる、たびに……」
ウィル・ホーソン
「僕が死んでいくんです」
ミュール
目を細める。
ウィル・ホーソン
「貴女が僕を好きだと言うたびに」
ウィル・ホーソン
「正しい僕が死んでいく」
ミュール
「正しくなくても、」
ミュール
「あなたが一番正しいわ」
ミュール
「私はそう、信じている」
ウィル・ホーソン
撫でる指を掴む。
ミュール
盲目。
ミュール
もうとっくに、前が見えない。
ミュール
正しいものが分からない。
ウィル・ホーソン
そのままシーツの海に押し付ける。
ミュール
すべて、この触れる熱に。
ミュール
溶かされていく。
ミュール
「……ウィル、ウィル」
ミュール
歌うような声。
ウィル・ホーソン
「なんて声で呼ぶんだよ」
ミュール
恋を乞う、鳥の囀り。
ウィル・ホーソン
「いつも、いつも」
ウィル・ホーソン
「本当に」
ウィル・ホーソン
「嫌なんだ、それが……」
ミュール
「あなたが好きなの」
ミュール
「どうしようもなく」
ミュール
「誤魔化そうとしても、」
ミュール
「悪意で覆おうとしても」
ウィル・ホーソン
「じゃあ、何を捧げてもいいの?」
ミュール
「駄目なのよ、ウィル」
ウィル・ホーソン
「裏切られたって、いいのか?」
ミュール
「ええ」
ミュール
「殺してもいい」
ミュール
「裏切ってもいい」
ミュール
掴まれた手に目を遣る。
ウィル・ホーソン
「この汚らわしい売女!」
ミュール
冷たい鎧は、ここにはない。
ウィル・ホーソン
「恥知らず……!」
ミュール
「聞き慣れている」
ミュール
「聞き慣れているわ」
ミュール
歌うような声。
ウィル・ホーソン
「僕の天使」
ウィル・ホーソン
「どうか、どうか、」
ウィル・ホーソン
「そんな悲しいことは、言わないで」
ウィル・ホーソン
「言わないでおくれ」
ミュール
「では」
ミュール
「そのかなしさを」
ミュール
「さみしさを」
ミュール
「あなたが埋めて」
ウィル・ホーソン
それを言い終えるまえに、
ウィル・ホーソン
唇で唇を塞いだ。
ウィル・ホーソン
*ミュールの『冷めたスープ』を舐めます
ウィル・ホーソン
2d6+3=>7 判定(+猟奇) (2D6+3>=7) > 4[2,2]+3 > 7 > 成功
ウィル・ホーソン
血が出るほどに噛み付く。
ウィル・ホーソン
むさぼって、乱暴に服を破く。
ミュール
赤い血を舐め取る。
ウィル・ホーソン
修道女のような格好だと思っていた。
ウィル・ホーソン
よくお似合いです、と褒めたこともあった。
ウィル・ホーソン
気付いていた。
ウィル・ホーソン
これが喪服だと。
ミュール
乱暴にされるのには慣れていて。
ミュール
だけど、身が竦むことはなかった。
ミュール
望んでいる。
ミュール
乞うている。
ウィル・ホーソン
唇が離れる。
「他の誰にでも、こうやって股を開いているんだろう」
ミュール
喪服がなくなれば、弔いは終わり。
ウィル・ホーソン
「たまたま僕がいたから、僕で良かったんだろう」
ウィル・ホーソン
「誰だって良いんだ、貴女は」
ウィル・ホーソン
「なのに」
ウィル・ホーソン
「どうして、」
ミュール
「ウィル、ウィル」
ミュール
歌うような声。
ウィル・ホーソン
「どうして僕には、」
ウィル・ホーソン
「貴女だけなんだ」
ミュール
「私は愛されたことがない」
ウィル・ホーソン
顕になった白い肌。
ウィル・ホーソン
いつか梳いてあげた亜麻色の髪。
ミュール
いくつもできた青痣。
ミュール
隠した首元。
ミュール
刻まれた、暴行の痕。
ウィル・ホーソン
よくあることだ。
ミュール
よくあること。
ミュール
よくある、日常に転がる不幸。
ミュール
「でも、良かった」
ミュール
「私を抱くことで、」
ミュール
「私を擦り減らすことで、」
ミュール
「誰かが満たされるのなら」
ウィル・ホーソン
「同じじゃあないですか」
ウィル・ホーソン
「それと僕と、何が違う」
ミュール
自己犠牲?いいえ。
ウィル・ホーソン
「愛してなんていませんよ」
ウィル・ホーソン
「貴女を愛してなんかない」
ウィル・ホーソン
傷へ手が触れる。
ミュール
「心を伴わないお人形を抱くの」
ミュール
「見ていると面白いのよ」
ミュール
嘲るように笑う。
ミュール
「それで、満足をする人を見ると」
ウィル・ホーソン
いつくしむように撫でる。
ミュール
「愚かで、笑ってしまう」
ミュール
「ほんとうに、愚か」
ウィル・ホーソン
指は、ちらばるおさげへ。
ミュール
「それでしか、自分の価値を確かめられない私も」
ウィル・ホーソン
暴力的に掴む。
ミュール
「ほんとうに、愚か。」
ウィル・ホーソン
ぶちぶち、と音がする。
ウィル・ホーソン
「ばかな女……」
ミュール
「そうでしょう」
ミュール
「あなたはそれを」
ウィル・ホーソン
「少し優しくしただけで、絆されて」
ミュール
「天使と呼んだのよ」
ウィル・ホーソン
「挙げ句の果てに王子様だなんて」
ウィル・ホーソン
「魔女め」
ミュール
息を吐くように笑う。
ミュール
「そうよ」
ウィル・ホーソン
「貴女は、魔女」
ミュール
「そうよ」
ウィル・ホーソン
髪のいくつかがちぎれる。
ミュール
「あなたが裁くの」
ウィル・ホーソン
「そんな」
ウィル・ホーソン
「そんな悲しいことは」
ミュール
それを見て、笑う。
ウィル・ホーソン
「言わないでくれ」
ウィル・ホーソン
「言わないで……」
ウィル・ホーソン
「どこか遠くへ行こう」
ミュール
掴まれた手を解いて。
ウィル・ホーソン
「もしかしたら、なにか、奇跡が起きて」
ウィル・ホーソン
「なにかが、」
ミュール
口付ける。
ミュール
言葉を塞ぐ。
ウィル・ホーソン
受け入れる。
ウィル・ホーソン
髪ごと抱き潰す。
ウィル・ホーソン
やわらかな体。
ウィル・ホーソン
熱すぎる己の体温。
ミュール
あたたかい。
ミュール
舌を伸ばす。
ミュール
貪るように絡める。
ウィル・ホーソン
激しい喜び。
ミュール
……忘れてしまえばいいわ。
ウィル・ホーソン
愛する女と体を重ね合わせること。
ミュール
忘れてしまえばいい。
ウィル・ホーソン
何にも勝る幸せ。
ミュール
愛する男と体を重ね合わせること。
ミュール
何にも勝る幸せ。
ミュール
それを、知る。
ミュール
体温が、溶けあうように同じ温度になっていく。
ウィル・ホーソン
リボンを買ってやればよかった。
ウィル・ホーソン
靴を贈ってやればよかった。
ウィル・ホーソン
そう、靴。
ミュール
冷たいスープは、だんだんと。
ウィル・ホーソン
荒野を歩きやすくなるような。
ミュール
熱に触れて、もとの温度を取り戻す。
ミュール
もっとはやくに、こうしていれば。
[ ミュール ] 冷めたスープ : 0 → 1
ウィル・ホーソン
魔女は
ウィル・ホーソン
死んだ
ウィル・ホーソン
ほうが
[ ウィル・ホーソン ] ミュール : 0 → 1
ウィル・ホーソン
いい。
ウィル・ホーソン
そして僕は。
ウィル・ホーソン
間違っています。
ミュール
間違っていて。
ミュール
わたしのために間違えて。
GM
ときおり荒野を吹き抜けてぶつかってくる風と、それに小屋が揺すぶられる音。互いの衣擦れ、足音、息遣い。何から何までうるさく、そして静か。
GM
端から端までが間違っていて、正しい。
どこからどこまでもが整っていて、傷ついている。
生きながらに息絶える。
死にながらに生き返る。
この世界にはあなたしかなく、この世界にはすべてがある。
GM
男と女。
魔女と天使。
喜びと苦しみ。
赤と青。
白と黒。
GM
救世主と救世主。
GM